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2016.09.03 Saturday
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とは言え、飛行機は依然として眼前に停滞したままだ。
曇天を背負って停滞したまま、小刻みに震える飛行機。
これを変事と呼ばずしてどうするという。
私は咄嗟の使命感にかられ、携帯のカメラを必死で起動し空へ向けた。
フリック。
ムービーに切り替え。
小さな液晶いっぱいに夜にぼけた飛行機が映る。
録画。
間の抜けた電子音がひとつ鳴った。
持ち直したかに見えた飛行機は、陰鬱な色の空で不穏な動きを繰り返す。
大きく揺れ、またわずかに下がる機首。
と思えば今度はがくりと尾翼が下がる。
機体の震える音、軋む音が聞こえてくるようだ。
私はカメラを向けたまま、じりじりと屋上の出口に向け後退しはじめる。
墜落するのも時間の問題であろう。
あの飛行機が降ってきたなら、このビルも、いや地上ですら命が危ない。
しかし次の瞬間、覗いていた携帯の液晶の中で、オレンジの光が爆ぜた。
次いで爆発音。
反射的に見上げた空に、飛行機の姿はない。
火を吹き高温に輝く、無数の鉄の欠片。
それが弧を描いて、一直線に地上めがけて降ってくる。
それはもちろん、私の頭上にも迫っていた。